「更年期になってから血圧が高くなった」
「健康診断で突然、高血圧を指摘された」
「ほてりや動悸がある時に血圧を測ると高い」
「更年期が終われば、血圧も自然に下がるの?」
このような不安を感じている女性は少なくありません。
更年期は、一般的に閉経の前後約5年ずつ、合計約10年間を指します。この時期は、女性ホルモンであるエストロゲンが大きく揺らぎながら減少し、ほてり、発汗、動悸、不眠、不安感など、さまざまな症状が現れることがあります。
さらに、閉経や加齢に伴って、高血圧、脂質異常症、糖尿病、肥満などの心血管リスクも高まりやすくなります。
ただし、血圧が高い状態を、すべて更年期障害のせいにするのは危険です。
高血圧は自覚症状がないことも多く、放置すると脳卒中、心筋梗塞、心不全、腎不全などにつながる可能性があります。
更年期症状への対処と同時に、血圧そのものをきちんと確認し、必要な場合は治療を受けることが大切です。
更年期に血圧が高くなりやすい理由
女性ホルモンの変化
更年期には、女性ホルモンのエストロゲンが大きく変動しながら減少します。
エストロゲンの変化は、血管や脂質代謝などにも影響すると考えられています。また、閉経後は加齢による血管の変化も重なり、血圧が上がりやすくなる人がいます。
ただし、血圧上昇の原因は女性ホルモンだけではありません。
年齢、遺伝、塩分の多い食事、体重増加、運動不足、飲酒、睡眠不足、ストレスなど、複数の要因が関係します。
「更年期だから一時的なもの」と決めつけず、継続して血圧を確認することが重要です。
自律神経の乱れ
更年期には、自律神経に関連する症状として、ほてり、発汗、動悸、頭痛、めまいなどが出ることがあります。
自律神経は血圧や心拍数の調整にも関係しています。
強いほてりや不安、緊張が起きた時には、一時的に交感神経が活発になり、心拍数や血圧が上がる場合があります。
たとえば、
・ホットフラッシュが起きた時
・動悸を感じた時
・仕事や家事で緊張している時
・病院で血圧を測った時
・血圧の数字を心配している時
などに、普段より高い数値が出ることがあります。
しかし、一時的な上昇なのか、日常的な高血圧なのかは、一度の測定だけでは判断できません。
体重増加や運動不足
更年期には、筋肉量や活動量が低下し、以前と同じ食生活でも体重が増えやすくなる人がいます。
体重増加、運動不足、内臓脂肪の増加は、血圧上昇に関係する要因です。
さらに、
・仕事が忙しく運動できない
・体調不良で外出が減った
・疲れやストレスで食べすぎる
・睡眠不足が続いている
といった生活の変化が重なると、血圧に影響することがあります。
急激なダイエットをする必要はありませんが、食事量や運動習慣を無理のない範囲で見直すことが大切です。
塩分の多い食生活
塩分を摂りすぎると、体内に水分をため込みやすくなり、血圧が上がる原因になります。
次のような食品は、塩分が多くなりやすいため注意しましょう。
・漬物
・梅干し
・ハムやソーセージ
・カップ麺
・ラーメンやうどんの汁
・スナック菓子
・市販の総菜
・干物
・濃い味付けの料理
すべてを禁止する必要はありません。
麺類の汁を残す、調味料をかける前に味見をする、加工食品を毎食続けないなど、小さな工夫から始めましょう。
睡眠不足やストレス
更年期には、寝つきが悪い、夜中に目が覚める、早朝に起きるといった睡眠の問題が現れることがあります。
十分に眠れない状態が続くと、疲労や緊張が抜けず、血圧が高くなりやすい場合があります。
また、仕事、家事、育児、介護、人間関係などのストレスが重なると、心身が常に緊張状態になります。
「休めば迷惑をかける」
「自分が頑張らなければ」
「これくらい我慢しなければ」
と無理を続けている人は、血圧だけでなく、動悸、不眠、頭痛なども悪化することがあります。
血圧が高いと頭痛やめまいが出る?
血圧が高い時に、
・頭痛
・めまい
・動悸
・肩こり
・顔のほてり
・耳鳴り
を感じる人もいます。
しかし、高血圧は症状がほとんどないまま進行することもあります。
つまり、「症状がないから血圧は大丈夫」とは限りません。高血圧は症状が出ないことが多いため、家庭や健診で実際に測定することが重要です。
一方で、頭痛やめまいがあるからといって、必ず血圧が原因とも限りません。
更年期症状、片頭痛、耳の病気、貧血、薬の影響などが関係している可能性もあります。
血圧はいくつから高い?
日本高血圧学会では、高血圧の診断基準は診察室血圧で上が140mmHg以上、または下が90mmHg以上としています。家庭血圧の高血圧基準は、診察室よりそれぞれ5mmHg低い数値が目安です。
ただし、1回だけ高かったからといって、すぐに高血圧と確定するわけではありません。
血圧は、
・緊張
・睡眠不足
・運動直後
・食事
・飲酒
・カフェイン
・寒さ
・痛み
・尿意
などによって変動します。
同じ条件で継続的に測り、平均的な傾向を見ることが大切です。
病院では高いのに家では正常な場合
病院や健康診断で緊張し、血圧が高くなる状態を「白衣高血圧」と呼びます。
反対に、病院では正常でも家庭では高い状態を「仮面高血圧」と呼びます。
白衣高血圧は、すぐに持続性高血圧と同じ扱いになるとは限りませんが、将来的に高血圧へ移行することがあるため、家庭血圧を定期的に測ることが勧められます。
病院での一度の数字だけで安心したり、不安になりすぎたりせず、家庭での記録を医師に見せましょう。
家庭血圧の正しい測り方
更年期に血圧が気になる人は、家庭用血圧計を使って記録することが役立ちます。
上腕に巻くタイプの血圧計を使い、できるだけ毎日同じ条件で測りましょう。
朝の測定
・起床後1時間以内
・排尿後
・朝食や服薬の前
・座って少し安静にしてから
夜の測定
・就寝前
・入浴、飲酒、運動の直後を避ける
・座って少し安静にしてから
測定する時は、背もたれのある椅子に座り、足を組まず、腕を心臓の高さにします。
測定中に話したり、スマートフォンを見たりしないようにしましょう。
日本高血圧学会も、高血圧の発見や治療状況の確認のために、家庭血圧を正しい条件で継続して測定することを勧めています。
血圧が高かった時にすぐできること
高い数字が出た時に、慌てて何度も連続で測ると、不安や緊張によってさらに上がることがあります。
まずは座ったまま静かに休みましょう。
肩の力を抜き、息を無理に大きく吸うのではなく、ゆっくり長く吐きます。
5分ほど落ち着いてから、もう一度測ってください。
その後は、
・測定した日時
・血圧と脈拍
・頭痛や胸痛などの症状
・睡眠時間
・服薬の有無
・ほてりや動悸の有無
を記録しておきます。
血圧が高いからといって、処方薬を自己判断で追加したり、反対に中止したりしてはいけません。
更年期の高血圧を改善する生活習慣
塩分を控える
減塩は血圧管理の基本です。
味を薄くするだけでなく、
・汁物は1日1回程度にする
・麺類の汁を残す
・酢やレモン、香辛料を活用する
・加工食品の頻度を減らす
・栄養成分表示の食塩相当量を見る
といった方法があります。
軽く体を動かす
無理のない散歩や軽い体操は、血圧や体重の管理に役立ちます。
ただし、血圧が非常に高い時、胸痛や強い息苦しさがある時は運動せず、医師に相談してください。
体調のよい日に10分程度歩くことから始めても構いません。
お酒を飲みすぎない
飲酒量が多いと、血圧が上がりやすくなります。
また、更年期のほてり、不眠、動悸が悪化する人もいます。
毎日飲む習慣がある人は、量を減らす、飲まない日を作るなどの工夫をしましょう。
睡眠を整える
眠れない状態が続いている場合は、無理に我慢しないことが大切です。
寝る直前のスマートフォンやカフェインを控える、起床時刻を一定にするなど、できることから整えましょう。
強い不眠が続く場合は、婦人科や内科、心療内科などへ相談してください。
更年期障害の治療で血圧も下がる?
ほてりや不眠、不安などによって一時的に血圧が上がっている場合は、更年期症状への治療によって血圧が安定する可能性があります。
更年期障害の治療には、
・生活習慣の見直し
・ホルモン補充療法
・漢方薬
・症状に応じた薬物療法
などがあります。
ただし、すでに高血圧を発症している場合は、更年期障害とは別に血圧の治療が必要になることがあります。
ホルモン補充療法を希望する場合も、血圧、持病、喫煙歴、血栓症のリスクなどを含めて医師が判断します。
自己判断でホルモン薬やサプリメントを使用せず、婦人科で相談しましょう。
何科を受診すればいい?
ほてり、発汗、月経不順、不眠などの更年期症状が強い場合は、婦人科へ相談できます。
家庭でも血圧が高い状態が続く場合は、内科や循環器内科が適しています。
次のような場合は、早めに受診しましょう。
・診察室で140/90mmHg以上を繰り返す
・家庭でも高い数値が続く
・血圧の上下が激しい
・動悸や息切れが続く
・頭痛やめまいが頻繁にある
・糖尿病や腎臓病がある
・家族に脳卒中や心筋梗塞が多い
・降圧薬を飲んでいるのに高い
婦人科と内科の両方で相談しても問題ありません。
すぐに救急要請を考える症状
血圧の数字だけで緊急性を判断するのではなく、症状の有無が重要です。
次のような症状が突然現れた場合は、更年期障害として様子を見ず、救急要請を検討してください。
・突然の激しい頭痛
・顔の片側がゆがむ
・片方の手足に力が入らない
・ろれつが回らない
・胸や背中に突然の激痛がある
・急な息切れや呼吸困難
・意識がもうろうとする
・けいれんする
・物が二重に見える
・立っていられないほどのめまい
厚生労働省も、突然の激しい頭痛、胸や背中の突然の激痛、急な息切れや呼吸困難などは、迷わず119番を検討する症状として案内しています。
救急車を呼ぶべきか迷う場合は、利用できる地域では救急相談窓口「#7119」へ相談する方法もあります。
まとめ:更年期の血圧上昇を放置しない
更年期には、女性ホルモンの変化、自律神経の乱れ、体重増加、睡眠不足、ストレスなどによって、血圧が高くなる人がいます。
ほてりや動悸、不安が強い時だけ、一時的に血圧が上がる場合もあります。
しかし、高血圧は自覚症状がないまま進行することもあります。
「更年期が終われば下がるだろう」
「動悸や頭痛は更年期のせい」
「一度だけ高かったから大丈夫」
と自己判断せず、家庭血圧を継続して記録しましょう。
塩分を少し減らす。
無理のない範囲で歩く。
お酒を控える。
睡眠と休息を確保する。
医師へ血圧の記録を見せる。
こうした積み重ねが、将来の脳卒中や心臓病を防ぐことにつながります。
更年期障害も高血圧も、我慢し続ける必要はありません。
婦人科や内科へ早めに相談し、体の変化に合った治療と生活習慣を取り入れていきましょう。

