「更年期になってから唾液が増えた気がする」
「口の中に唾液がたまり、何度も飲み込んでしまう」
「話している時や寝ている時によだれが出る」
「唾液過多も更年期障害の症状なの?」
このような変化があると、何か病気ではないかと心配になりますよね。
唾液過多とは、唾液の分泌量が増えたり、唾液をうまく飲み込めず口の中にたまったりする状態です。「流涎」「唾液分泌過多」と表現されることもあります。
結論からいうと、唾液過多は更年期障害の代表的な症状ではありません。
更年期には、ほてり、発汗、動悸、めまい、不眠、不安感、胃腸の不調など、さまざまな症状が現れます。更年期症状は、卵巣機能の低下による女性ホルモンの減少だけでなく、体質、性格、生活環境、心理的・社会的な要因などが複雑に関係して起こるとされています。
一方、更年期の口腔症状としては、唾液が増えることよりも、口の渇きや口腔乾燥が問題になることがあります。厚生労働省のガイダンスでも、口腔乾燥は更年期症状とほかの病気の症状が重なることがあるため、適切な確認が必要だとされています。
そのため、更年期の時期に唾液過多が起きたとしても、すべてを女性ホルモンの影響だけで説明せず、ほかの原因がないか考えることが大切です。
唾液過多には2つのタイプがある
唾液過多には、大きく分けて2つの状態があります。
ひとつは、唾液そのものが通常より多く分泌されている状態です。
もうひとつは、唾液の分泌量はそれほど増えていないものの、飲み込む回数が減ったり、飲み込みにくくなったりして、口の中に唾液がたまっている状態です。
本人にはどちらも「唾液が多い」と感じられます。
特に、
・唾液を何度も飲み込む
・口の中に唾液が残る
・話していると唾液があふれそうになる
・寝ている時によだれが出る
・飲み込む時に違和感がある
という場合は、唾液の量だけでなく、鼻呼吸、喉の状態、飲み込み方、薬の影響なども確認する必要があります。
更年期に唾液過多を感じる原因
胃酸の逆流や吐き気
唾液が急に増える原因のひとつが、胃酸の逆流や吐き気です。
胃酸が食道や喉へ上がってくると、粘膜を守ろうとして唾液が多く出ることがあります。この状態は「ウォーターブラッシュ」と呼ばれることもあります。
更年期には、胃もたれ、胸やけ、吐き気、便秘、下痢などの消化器症状を感じる人もいます。
次のような症状を伴う場合は、逆流性食道炎などが関係している可能性があります。
・食後に唾液が増える
・胸やけがする
・酸っぱいものが上がってくる
・喉に違和感がある
・げっぷが増えた
・横になると症状が強くなる
・朝起きると口の中が酸っぱい
症状が続く場合は、内科や消化器内科へ相談しましょう。
口腔乾燥による粘つき
更年期では、口の中が乾燥したり、唾液が粘ついたりすることがあります。
口が乾いているのに「唾液が多い」と感じるのは不思議かもしれません。
しかし、さらさらした唾液が少なくなり、粘り気が強くなると、唾液が口や喉に残りやすくなります。
そのため、
「唾液が口の中にたまる」
「何度飲み込んでも残っている」
「ねばねばして気持ちが悪い」
と感じることがあります。
つまり、実際には唾液過多ではなく、口腔乾燥によって唾液の性質が変化している可能性もあるのです。
口の乾燥、舌の痛み、味覚の変化、口臭、むし歯の増加などがある場合は、歯科や口腔外科で相談するとよいでしょう。
飲み込みにくさ
唾液は、普段は無意識のうちに飲み込まれています。
ところが、喉の違和感、口や喉の筋力低下、強い緊張、神経の病気などによって飲み込む回数が減ると、唾液が口の中にたまりやすくなります。
次のような症状がある場合は注意が必要です。
・水やお茶でむせる
・食事中によく咳が出る
・唾液を飲み込みにくい
・食べ物が喉に残る
・声がかすれる
・飲み込んだ後に声が濁る
・口から唾液がこぼれる
特に、日中もよだれが出る場合や、食事中のむせが増えた場合は、耳鼻咽喉科などで飲み込む機能を確認してもらうことが大切です。
鼻づまりや口呼吸
鼻炎や副鼻腔炎などで鼻がつまると、睡眠中に口呼吸になりやすくなります。
口を開けて寝ることで、唾液が外に流れ、枕によだれがつくことがあります。
・寝ている時だけよだれが出る
・鼻づまりがある
・いびきがある
・朝起きると口が乾いている
・横向きやうつ伏せで寝ている
という場合は、唾液の分泌量よりも、口呼吸や寝姿勢が関係している可能性があります。
いびきが大きい、睡眠中に呼吸が止まると言われる、日中の眠気が強い場合は、睡眠時無呼吸症候群などの確認も必要です。
薬の影響
薬の種類によっては、唾液分泌が増えることがあります。
実際に、医療用医薬品の添付文書には、副作用として「唾液分泌過多」や「流涎」が記載されている薬があります。
更年期の時期には、
・睡眠薬
・抗不安薬
・抗うつ薬
・吐き気止め
・アレルギーの薬
・神経系に作用する薬
・漢方薬や市販薬
などを使っている人もいます。
薬を飲み始めた後や、薬の量を変えた後に唾液が増えた場合は、薬の影響も考えられます。
ただし、自己判断で急に服用を中止すると、症状が悪化したり、別の不調が出たりする可能性があります。必ず処方した医師や薬剤師へ相談してください。
不安やストレス
更年期には、不安感、イライラ、不眠、気分の落ち込みなどが出ることがあります。
不安が強いと、自分の体の感覚に意識が集中しやすくなります。
普段なら無意識に飲み込んでいる唾液が気になり、
「唾液がまた出てきた」
「飲み込めなくなったらどうしよう」
「人前で唾液があふれたら恥ずかしい」
と考えてしまうことがあります。
唾液を気にするほど飲み込む動作がぎこちなくなり、口や喉に力が入って、さらに唾液がたまったように感じる場合もあります。
これは気のせいという意味ではありません。
不安によって症状への注意が強くなり、体感がつらくなっている可能性があるということです。
更年期障害の治療で唾液過多は改善する?
更年期症状に伴う不安、睡眠不足、胃腸の不調などが唾液過多を間接的に悪化させている場合は、更年期症状の治療によって楽になる可能性があります。
更年期障害では、症状や体質、持病などに応じて、生活習慣の見直し、漢方薬、ホルモン補充療法、心理的な支援などが検討されます。
ただし、唾液過多の原因が、
・逆流性食道炎
・鼻の病気
・口腔内の問題
・嚥下機能の低下
・薬の副作用
・神経の病気
などであれば、それぞれに合った治療が必要です。
「更年期の治療をすれば必ず唾液過多が治る」とは限りません。
唾液過多が気になる時の対処法
症状が出る状況を記録する
まずは、いつ唾液が増えるのかを確認してみましょう。
・朝、昼、夜のどの時間に多いか
・食前と食後のどちらに多いか
・寝ている時だけか
・日中も口からこぼれるか
・胸やけや吐き気を伴うか
・鼻づまりがあるか
・緊張すると増えるか
・薬を飲んだ後に増えるか
・月経周期との関係があるか
記録があると、医療機関を受診した際にも症状を伝えやすくなります。
胃に負担をかけない
胸やけや吐き気を伴う場合は、
・一度に食べすぎない
・脂っこい食事を控える
・就寝直前の食事を避ける
・食後すぐ横にならない
・カフェインやアルコールを摂りすぎない
ことを意識しましょう。
口の中を清潔にする
唾液がたまりやすい、口が粘つくという人は、口腔ケアも大切です。
・こまめに水分をとる
・歯をやさしく磨く
・舌を強くこすらない
・アルコール入りの洗口液を使いすぎない
・定期的に歯科検診を受ける
口腔乾燥がある時に水分を一気に大量摂取する必要はありません。少量ずつ、こまめに補給しましょう。
唾液を無理に止めようとしない
唾液が気になると、何度も強く飲み込んだり、口に力を入れて止めようとしたりすることがあります。
しかし、無理に意識すると、かえって唾液が気になり続けることがあります。
飲み込める場合は、口や肩の力を抜き、ゆっくり自然に飲み込みましょう。
何科を受診すればいい?
唾液過多の相談先は、伴う症状によって異なります。
ほてり、発汗、月経不順、不眠、動悸など、更年期症状も強い場合は、婦人科が相談先になります。
胸やけ、吐き気、胃もたれ、酸っぱいものが上がる症状がある場合は、内科や消化器内科が適しています。
飲み込みにくさ、むせ、喉の違和感、鼻づまりがある場合は、耳鼻咽喉科で相談しましょう。
口の乾燥、粘つき、舌の痛み、歯や歯茎の問題がある場合は、歯科や口腔外科が相談先です。
服用中の薬が関係している可能性がある場合は、処方した医師や薬剤師へ確認してください。
どこへ行けばよいかわからない場合は、まずかかりつけの内科で相談しても構いません。
すぐに受診した方がよい症状
次のような状態がある場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。
・唾液過多が数週間以上続いている
・日中も口からよだれが出る
・水分や食事でむせる
・食べ物が飲み込みにくい
・体重が減っている
・声がかすれる
・胸やけや吐き気が強い
・薬を変更してから症状が始まった
・症状で会話や外出が難しい
・睡眠に支障が出ている
また、次のような症状が突然現れた場合は、脳卒中など緊急性の高い病気の可能性があります。
・顔の片側が下がる
・片方の手足に力が入らない
・ろれつが回らない
・急に飲み込めなくなった
・突然の激しい頭痛
・意識がぼんやりする
・呼びかけへの反応が悪い
この場合は、更年期症状だと考えて様子を見ず、速やかに救急要請を検討してください。
まとめ:更年期の唾液過多は、ほかの原因も確認することが大切
唾液過多は、更年期障害の代表的な症状ではありません。
更年期の時期に唾液が増えたように感じる場合は、
・胃酸の逆流や吐き気
・口腔乾燥による唾液の粘つき
・飲み込みにくさ
・鼻づまりや口呼吸
・睡眠中の姿勢
・薬の副作用
・不安やストレス
などが関係している可能性があります。
実際には唾液が増えているのではなく、粘ついた唾液が口や喉に残り、「唾液が多い」と感じているケースもあります。
症状があることを恥ずかしいと思う必要はありません。
いつ症状が出るのか。
胸やけやむせはないか。
寝ている時だけなのか。
薬を変更していないか。
こうした点を確認し、症状が続く時は婦人科、内科、耳鼻咽喉科、歯科などへ相談しましょう。
「更年期だから仕方がない」と決めつけず、原因をひとつずつ確認することが、安心と改善への第一歩です。

