「更年期になってから、よだれが増えた気がする」
「口の中に唾液がたまりやすい」
「寝ている間によだれが出るようになった」
「これも更年期障害の症状なの?」
このような変化があると、不安になりますよね。
更年期には、ほてり、発汗、動悸、めまい、不眠、イライラ、気分の落ち込みなど、さまざまな不調が現れることがあります。厚生労働省では、更年期を一般的に45~55歳頃とし、卵巣機能の低下による女性ホルモンの減少に加え、体質や心理的・社会的要因なども症状に関係すると説明しています。
ただし、よだれや唾液の増加は、更年期障害の代表的な症状とはいえません。
更年期の時期に唾液が増えたように感じても、実際には唾液の量そのものが増えているとは限らず、口の中の乾燥、粘つき、飲み込みにくさ、胃の不調、鼻づまり、睡眠中の姿勢などが関係している可能性があります。
「更年期だから仕方がない」と決めつけず、症状の出方を確認することが大切です。
更年期障害によってよだれが増えることはある?
現時点では、よだれの増加が更年期障害の典型的な症状であるとは考えられていません。
むしろ、更年期では女性ホルモンの変化などにより、口が渇く、口の中が粘つくといった口腔乾燥を感じる人がいます。厚生労働省の資料でも、口腔乾燥は更年期症状や自己免疫疾患の症状と重なることがあるとされています。
口が乾燥しているのに、よだれが増えたように感じるのは不思議に思えるかもしれません。
しかし、唾液が少なくなって粘り気が強くなると、口の中にまとわりつきやすくなります。その結果、
「唾液がたまっている」
「何度も飲み込まなければならない」
「口の中がねばねばする」
と感じることがあります。
つまり、唾液が増えているのではなく、唾液の性質や飲み込み方が変化している可能性もあります。
よだれが増えたように感じる主な原因
更年期の時期によだれが気になる場合、さまざまな原因が考えられます。
口の中の乾燥や粘つき
更年期になると、口の渇きや粘つきを感じる人がいます。
唾液が減ると、さらさらした状態ではなくなり、口や喉に残りやすくなることがあります。
その結果、実際の唾液量は増えていなくても、
「唾液が多い」
「口からあふれそう」
と感じる場合があります。
口腔乾燥が続くと、むし歯、歯周病、口腔カンジダ、味覚の変化、飲み込みにくさなどにつながる可能性もあります。国立長寿医療研究センターの資料でも、口渇や唾液分泌量の低下は、口腔内の病気や嚥下障害などと関連するとされています。
飲み込む回数が減っている
唾液は通常、無意識のうちに飲み込まれています。
ところが、疲労や強い緊張、喉の違和感、口周りの筋力低下などがあると、唾液を飲み込む回数が減ることがあります。
唾液の分泌量が正常でも、飲み込めずに口の中へたまると、よだれが増えたように感じます。
特に、
・食事中によくむせる
・水を飲むと咳が出る
・唾液を飲み込みにくい
・声がかすれる
・喉に何か残る感じがする
といった症状がある場合は、単なる更年期症状として済ませず、耳鼻咽喉科などへ相談することが大切です。
胃酸の逆流や吐き気
胃酸が食道へ逆流する逆流性食道炎や、吐き気がある時には、唾液が増えることがあります。
これは、胃酸から口や食道を守ろうとして唾液が多く分泌されるためと考えられます。
更年期には胃もたれ、胸やけ、吐き気、食欲の変化など、消化器系の不調を感じる人もいます。
次のような症状がある場合は、胃の不調が関係しているかもしれません。
・胸やけがする
・酸っぱいものが上がってくる
・食後によだれが増える
・横になると喉が気持ち悪い
・朝起きた時に口が酸っぱい
・げっぷが増えた
これらが続く場合は、内科や消化器内科で相談しましょう。
鼻づまりや口呼吸
アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎などで鼻がつまると、寝ている間に口呼吸になりやすくなります。
口を開けたまま眠るため、唾液が外に流れて、枕によだれがつくことがあります。
更年期と同じ時期に始まったとしても、原因が鼻づまりである可能性があります。
・いびきをかく
・朝起きると口が渇く
・鼻がつまっている
・夜だけよだれが出る
・横向きで寝るとよだれが出やすい
このような場合は、鼻や睡眠の状態を確認してみましょう。
睡眠中の姿勢
横向きやうつ伏せで眠ると、重力によって唾液が口の外に流れやすくなります。
睡眠が深くなって口周りの筋肉が緩んだ時にも、よだれが出ることがあります。
寝ている間だけよだれが出て、日中には問題がない場合は、寝姿勢や口呼吸が関係している可能性があります。
薬の影響
更年期の時期には、睡眠薬、抗不安薬、抗うつ薬、アレルギー薬、血圧の薬など、複数の薬を服用している人もいます。
薬によっては口が乾燥したり、眠気が強くなったり、飲み込みに影響したりすることがあります。
一方で、一部の薬では唾液が増えることもあります。
薬を飲み始めた後によだれが増えた場合は、自己判断で中止せず、処方した医師や薬剤師へ相談してください。
不安やストレスで唾液が気になることもある
更年期には、不安感、イライラ、不眠、気分の落ち込みなどの精神的な症状が現れることがあります。
不安が強い時は、体の感覚に意識が集中しやすくなります。
普段なら気にならない唾液の量や飲み込み方が、急に気になり始めることもあります。
「また唾液がたまってきた」
「飲み込めなくなったらどうしよう」
「人前でよだれが出たら恥ずかしい」
このように考えるほど緊張し、喉や口周りに力が入り、さらに飲み込みにくく感じることがあります。
症状は気のせいではありません。
ただし、唾液そのものの異常ではなく、不安と体の緊張が症状を強く感じさせている可能性もあります。
日中に口からよだれが出る場合は注意
寝ている時に少量のよだれが出ることは、珍しいことではありません。
しかし、起きている時にも口から唾液がこぼれる場合は、飲み込む働きや口周りの筋肉に問題がないか確認する必要があります。
特に、次のような症状を伴う場合は早めの受診が必要です。
・飲み物でむせる
・食べ物が飲み込みにくい
・言葉が話しにくい
・口の片側からよだれが出る
・片方の手足に力が入らない
・顔の片側が動きにくい
・急に強い頭痛が起きた
・意識がぼんやりする
顔のゆがみ、片側の手足の麻痺、言葉の出にくさなどが突然現れた場合は、脳卒中など緊急性の高い病気の可能性があります。すぐに救急要請を検討してください。
更年期のよだれが気になる時にできること
よだれや唾液のたまりが気になる時は、原因に合わせた対処が必要です。
まずは次のような点を確認してみましょう。
症状が出る時間を記録する
次の内容を簡単に記録すると、原因を探しやすくなります。
・寝ている時だけか
・日中にも出るか
・食事の前後で増えるか
・吐き気や胸やけを伴うか
・鼻づまりがあるか
・薬を飲んだ後に変化するか
・月経周期との関係があるか
・不安や緊張が強い時に悪化するか
「更年期だから」と一括りにせず、症状が出る状況を整理することが大切です。
口の中を清潔に保つ
口の中が乾燥したり粘ついたりすると、細菌が増えやすくなることがあります。
・やさしく歯を磨く
・舌を強くこすりすぎない
・こまめに水分をとる
・アルコール入り洗口液を使いすぎない
・定期的に歯科を受診する
といった対策を取りましょう。
口の渇きや粘つきが強い場合は、歯科や口腔外科で唾液量や口腔内の状態を確認してもらう方法もあります。
胃に負担をかけすぎない
胸やけや吐き気がある人は、
・食べすぎない
・脂肪分の多い食事を控える
・食後すぐに横にならない
・就寝直前に食べない
・アルコールやカフェインを摂りすぎない
ことを意識してみましょう。
症状が続く場合は、市販薬だけで長期間対処せず、医療機関へ相談してください。
寝る姿勢を見直す
睡眠中によだれが出る場合は、
・枕の高さを見直す
・鼻づまりを治療する
・極端なうつ伏せ寝を避ける
・寝室の乾燥を防ぐ
・飲酒後すぐに寝ない
といった工夫が役立つ場合があります。
ただし、いびきが大きい、睡眠中に呼吸が止まると言われる、日中の眠気が強い場合は、睡眠時無呼吸症候群なども考えられるため、医療機関に相談しましょう。
何科を受診すればいい?
よだれや唾液の症状は、原因によって適した診療科が異なります。
口の乾燥、粘つき、歯や舌の違和感がある場合は、歯科や口腔外科が相談先になります。
喉の違和感、飲み込みにくさ、鼻づまりがある場合は、耳鼻咽喉科が適しています。
胸やけ、吐き気、胃もたれがある場合は、内科や消化器内科へ相談しましょう。
月経不順、ほてり、発汗、動悸、不眠など、更年期症状が複数ある場合は、婦人科で相談できます。
どこへ行けばよいかわからない時は、まずかかりつけの内科で相談しても構いません。
更年期障害として治療するとよだれも改善する?
よだれの原因が更年期に伴う不安、睡眠の乱れ、口腔乾燥などと関係している場合は、更年期症状への治療によって間接的に楽になる可能性があります。
更年期障害の治療には、症状や体質に応じて、生活習慣の見直し、漢方薬、ホルモン補充療法、心理的な支援などが検討されます。
ただし、よだれの原因が逆流性食道炎、鼻の病気、薬の副作用、嚥下障害などであれば、それぞれの原因に合った治療が必要です。
更年期の治療だけですべて改善すると決めつけないことが大切です。
受診を考えた方がよいサイン
次のような症状がある場合は、医療機関へ相談しましょう。
・よだれが急に増えた
・日中も口から唾液がこぼれる
・食事や水分でむせる
・飲み込みにくい
・声が変わった
・口の中の乾燥や痛みが続く
・胸やけや吐き気が強い
・薬を変更してから症状が始まった
・体重が減ってきた
・症状が数週間以上続く
・日常生活や睡眠に支障が出ている
さらに、顔の片側が下がる、片方の手足が動かしにくい、ろれつが回らない、突然の激しい頭痛、意識障害などがある場合は、すぐに救急要請を検討してください。
まとめ:更年期のよだれを「年齢のせい」だけで済ませない
よだれや唾液の増加は、更年期障害の代表的な症状ではありません。
更年期の時期に症状が始まったとしても、
・口腔乾燥や唾液の粘つき
・飲み込みにくさ
・胃酸の逆流や吐き気
・鼻づまりや口呼吸
・睡眠中の姿勢
・薬の影響
・不安やストレス
など、さまざまな原因が考えられます。
特に、口が乾いて粘つくことで、唾液が増えたように感じている場合もあります。
まずは、いつ、どのような時によだれが気になるのかを記録してみましょう。
寝ている時だけなのか。
日中にも出るのか。
胸やけや鼻づまりがあるのか。
飲み込みにくさを伴うのか。
こうした違いが、原因を見つける手がかりになります。
「更年期だから仕方がない」
「恥ずかしくて相談できない」
と我慢する必要はありません。
よだれや口の違和感も、体からの大切なサインです。症状が続く時は、婦人科だけでなく、歯科、耳鼻咽喉科、内科などにも相談し、自分に合った原因と対処法を見つけていきましょう。
