妊活中にビタミンAを意識したい理由
ビタミンAは目・皮膚・粘膜を守る栄養素
ビタミンAは、目、皮膚、粘膜、免疫の働きに関わる大切な栄養素です。
「目に良いビタミン」というイメージが強いかもしれませんが、実は体の表面を守る粘膜にも関係しています。
粘膜とは、口、鼻、のど、胃腸などの内側にある、体を守るうすいバリアのような部分です。
このバリアが元気に働くことで、体は外から入ってくるものに対応しやすくなります。
妊活中は、特別な栄養だけを追いかけるより、まず体の基本的な働きを整えることが大切です。
ビタミンAは、その土台を支える栄養素のひとつです。
また、ビタミンAは細胞の成長や分化にも関わります。
妊娠は、受精卵が細胞分裂をくり返しながら進んでいくものです。
そのため、体の中で細胞が正しく働くための栄養を不足させないことは、妊活中にも意味があります。
ただし、ビタミンAをとれば妊娠しやすくなる、という単純な話ではありません。
妊活には、年齢、排卵、卵管、子宮、精子の状態、体重、睡眠、ストレス、持病など、たくさんの要素が関係します。
ビタミンAは、妊娠を決めるスイッチではなく、体の調子を支える部品のような存在です。
NIHの資料でも、ビタミンAは視覚、免疫、生殖、成長と発達に必要な栄養素とされています。
つまり、妊活中にビタミンAを完全に避ける必要はありません。
むしろ、食事から適量をとることは大切です。
大事なのは、足りなさすぎても、多すぎてもよくないというバランスです。
特に妊娠の可能性がある時期は、サプリやレバーの食べすぎに注意しながら、毎日の食事で自然に取り入れる考え方が安心です。
妊娠前から「不足」と「とりすぎ」の両方に注意する
妊活中のビタミンAでいちばん大切なのは、「必要だけれど、とりすぎに注意」という考え方です。
ビタミンAが不足すると、目や皮膚、粘膜、免疫の働きに影響することがあります。
一方で、サプリなどから多くとりすぎると、妊娠中には赤ちゃんへの影響が心配されます。
とくに注意が必要なのは、レチノールなどの「できあがった形のビタミンA」です。
これは、レバー、うなぎ、動物性食品、一部のサプリに含まれます。
NIHは、妊娠中に高用量のできあがった形のビタミンAをとると、赤ちゃんの目、頭蓋、肺、心臓などの先天異常につながる可能性があると説明しています。
妊活中は、まだ妊娠に気づいていない時期があります。
排卵後から生理予定日までの間は、妊娠しているかどうかがわからないことも多いです。
だからこそ、「妊娠がわかってから気をつける」より、「妊活中から安全な量を意識する」ほうが安心です。
ただし、ビタミンAを怖がりすぎる必要はありません。
野菜に含まれるβカロテンは、体の中で必要に応じてビタミンAに変わります。
そのため、にんじんやかぼちゃなどの野菜を普通に食べるぶんには、レチノールのとりすぎとは考え方が違います。
問題になりやすいのは、レバーを頻繁に大量に食べることや、高用量のビタミンAサプリを重ねて飲むことです。
MotherToBabyも、できあがった形のビタミンAを推奨される上限より多くとることや、反対に不足することは、先天異常の可能性と関係する場合があると説明しています。
妊活中は、極端がいちばん危険です。
「全くとらない」でもなく、「たくさんとる」でもありません。
食事で適量をとり、サプリは成分表示を確認する。
この基本を守ることが、ビタミンAとの上手な付き合い方です。
ビタミンAを含む食べ物
レバーやうなぎに多いレチノールは量に気をつける
ビタミンAを多く含む食品として有名なのが、レバーとうなぎです。
どちらも栄養価が高く、鉄やたんぱく質なども含む食品です。
そのため、妊活中に「栄養をつけたい」と思って食べたくなる人もいるでしょう。
しかし、レバーとうなぎはビタミンAの量が多いため、食べ方には注意が必要です。
特にレバーは、少量でもレチノールを多く含みます。
レチノールは、動物性食品に含まれるできあがった形のビタミンAです。
体に必要な栄養ではありますが、妊娠の可能性がある時期に多くとりすぎると心配があります。
NIHの一般向け資料では、妊娠中にできあがった形のビタミンAをとりすぎると、赤ちゃんの先天異常の原因になることがあるとされています。
妊活中は、妊娠していることにまだ気づいていない時期があるため、レバーを毎日のように食べる習慣は避けたほうが安心です。
「レバーは絶対に食べてはいけない」と考える必要はありません。
ただし、頻度と量を控えめにすることが大切です。
たとえば、貧血が気になるからといって、自己判断でレバーを大量に食べ続けるのはおすすめできません。
鉄をとりたい場合は、赤身肉、魚、あさり、大豆製品、小松菜など、ほかの食品も組み合わせましょう。
ビタミンCを含む野菜や果物と一緒に食べると、植物性食品の鉄の吸収を助けることもあります。
うなぎも、栄養豊富ですが、ビタミンAが多い食品です。
たまに楽しむ程度なら過度に怖がる必要はありませんが、「妊活に良さそうだから頻繁に食べる」という考え方は控えめにしたほうがよいです。
食べ物は薬ではありません。
栄養が多い食品ほど、毎日たくさん食べればよいわけではありません。
妊活中の食事では、同じ食品に頼りすぎず、肉、魚、卵、大豆製品、野菜を広く組み合わせることが大切です。
レバーやうなぎは「たまに食べる栄養豊富な食品」と考えるくらいが、安心して続けやすい距離感です。
にんじんやかぼちゃのβカロテンを上手に使う
妊活中にビタミンAを食事からとるなら、にんじん、かぼちゃ、ほうれん草、小松菜、春菊などの緑黄色野菜を上手に使うのがおすすめです。
これらの野菜には、βカロテンなどのプロビタミンAカロテノイドが含まれます。
βカロテンは、体の中で必要な分だけビタミンAに変わる成分です。
レバーやサプリに含まれるレチノールとは違い、普通の食事で野菜からとる場合は、とりすぎの心配が比較的少ないと考えられます。
もちろん、同じものばかり極端に食べる必要はありません。
大切なのは、毎日の食卓に緑黄色野菜を少しずつ入れることです。
にんじんなら、味噌汁、きんぴら、カレー、野菜炒めに入れられます。
かぼちゃなら、煮物、スープ、サラダ、焼き野菜にできます。
ほうれん草や小松菜なら、卵炒め、白和え、おひたし、味噌汁に使いやすいです。
βカロテンは脂溶性の成分なので、油と一緒に調理すると吸収されやすくなります。
たとえば、にんじんを少量の油で炒める、かぼちゃにごまやオリーブオイルを合わせる、ほうれん草を卵と炒めるなどの工夫ができます。
妊活中は、難しい栄養計算をしようとすると疲れてしまうことがあります。
そんなときは、食卓の色を見るのもよい方法です。
白いごはん、茶色い肉だけでなく、にんじんのオレンジ、かぼちゃの黄色、小松菜の緑があると、自然に栄養の幅が広がります。
厚生労働省の基準でも、ビタミンA量はレチノールだけでなく、βカロテンなどを換算したμgRAEという単位で考えられています。
つまり、野菜からとるビタミンAも、体にとって大切な栄養源です。
サプリで一気に足すより、まずは食事に緑黄色野菜を増やすほうが、妊活中には安全で続けやすい方法です。
「毎日完璧に食べる」ではなく、「今日の一皿に色の濃い野菜を足す」くらいから始めてみましょう。
妊活中のサプリとの付き合い方
ビタミンA入りサプリは成分表示を見る
妊活中にサプリを飲む人は多いです。
葉酸サプリ、マルチビタミン、鉄サプリ、美容サプリなど、いくつかを組み合わせている人もいます。
ここで注意したいのが、ビタミンAの重複です。
ひとつひとつのサプリでは多くないように見えても、複数を一緒に飲むと、合計量が増えることがあります。
特に「レチノール」「レチニルパルミテート」「レチニルアセテート」などと表示されているものは、できあがった形のビタミンAです。
妊娠の可能性がある時期は、このタイプの量に注意しましょう。
一方で、「βカロテン」と書かれているものは、体の中で必要に応じてビタミンAに変わる形です。
同じビタミンAでも、表示のされ方によって意味が違います。
サプリを選ぶときは、パッケージの大きな文字だけでなく、成分表示の小さな文字を見ることが大切です。
NIHのビタミンA専門資料では、できあがった形のビタミンAの総摂取量が上限を超えることや、一部のレチノイド薬が先天異常を起こす可能性があると説明されています。
また、妊活中に特に意識したい栄養素としては葉酸があります。
厚生労働省の資料では、妊娠を計画している女性や妊娠の可能性がある女性、妊娠初期の妊婦は、通常の食品以外から葉酸を1日400μgとることが望ましいとされています。
つまり、妊活サプリを選ぶときは、まず葉酸を確認し、次にビタミンAが多すぎないかを見るとよいです。
海外製のサプリや個人輸入品は、成分量が日本の感覚と違う場合があります。
高用量を売りにした商品もあるため、妊活中には慎重に考えましょう。
不妊治療中の人、持病がある人、薬を飲んでいる人は、サプリを始める前に医師や薬剤師に相談するのが安心です。
サプリは便利ですが、飲めば飲むほど妊活に良いものではありません。
成分を知って、必要なものを適量だけ使うことが大切です。
妊活ではビタミンAだけでなく食事全体を整える
ビタミンAは、妊活中の体づくりに必要な栄養素です。
しかし、ビタミンAだけを意識しても、妊活の土台は整いません。
体は、たくさんの栄養が組み合わさって働いています。
たんぱく質は、体を作る材料になります。
鉄は、酸素を運ぶ血液に関わります。
亜鉛は、細胞づくりや生殖機能に関係します。
葉酸は、妊娠前から特に意識したいビタミンです。
ビタミンC、D、Eも、それぞれ違う形で体を支えています。
だからこそ、妊活中の食事は「これだけ食べれば大丈夫」ではなく、全体のバランスを見ることが大切です。
基本は、主食、主菜、副菜です。
主食は、ごはん、パン、麺などです。
主菜は、肉、魚、卵、大豆製品などです。
副菜は、野菜、きのこ、海藻などです。
ここに、果物や乳製品を必要に応じて足すと、栄養の幅が広がります。
国立健康・栄養研究所の妊産婦向け食生活指針でも、妊娠前から健康なからだづくりを始めることや、主食、主菜、副菜を組み合わせた食事の大切さが示されています。
ビタミンAを意識するなら、毎日の食事に緑黄色野菜を入れることから始めるとよいです。
朝は、卵と小松菜の味噌汁。
昼は、にんじん入りの野菜炒め。
夜は、かぼちゃの煮物やほうれん草のおひたし。
このような小さな工夫で、自然にビタミンAをとることができます。
反対に、食事を抜いてサプリだけ飲む、夜更かしを続けながら栄養だけ足す、という方法では、体の土台は整いにくいです。
妊活では、食事、睡眠、運動、ストレス対策、禁煙、飲酒を控えることも大切です。
そして、妊活が長引いている場合や、生理不順、強い生理痛、排卵の不安、男性側の不安がある場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。
ビタミンAは大切な栄養素ですが、妊娠を約束する魔法ではありません。
適量を守りながら、毎日の食事全体を整えることが、妊活中の体と心を支えるいちばん安心な方法です。

