「自律神経失調症と言われたけれど、うつ病とは違うの?」
「めまい、動悸、だるさ、不眠が続いているけど、これは自律神経の乱れ?」
「気分の落ち込みもある場合は、うつ病の可能性があるの?」
このように悩んでいる方は少なくありません。
自律神経失調症とうつ病は、症状が重なる部分があります。どちらも、だるさ、不眠、動悸、めまい、頭痛、胃腸の不調、息苦しさ、食欲不振などが出ることがあります。
そのため、症状だけを見て「これは自律神経失調症」「これはうつ病」と自分で判断するのは難しいです。
大切なのは、体の症状だけでなく、気分、意欲、興味、生活への支障がどれくらい続いているかを見ることです。
自律神経失調症とは
自律神経失調症とは、交感神経と副交感神経のバランスが乱れ、体にさまざまな不調が出ている状態を指して使われることが多い言葉です。
自律神経は、心臓の動き、呼吸、体温調節、血圧、胃腸の働き、発汗などを自動的に調整しています。
そのため、自律神経が乱れると、次のような症状が出ることがあります。
・動悸
・息苦しさ
・めまい
・ふらつき
・頭痛
・肩こり
・手足の冷え
・胃の不快感
・下痢や便秘
・汗をかきやすい
・疲れやすい
・眠りが浅い
・朝起きるのがつらい
厚生労働省の「こころの耳」でも、不安や恐怖を感じると自律神経系が興奮し、動悸、息苦しさ、血圧上昇、発汗、口渇、肩こりなどの身体症状が現れると説明されています。
自律神経失調症では、体の不調が前面に出やすいのが特徴です。
ただし、検査で大きな異常が見つからないからといって、「気のせい」という意味ではありません。ストレス、過労、睡眠不足、生活リズムの乱れ、気温差、ホルモンバランスなどが重なり、体がうまく調整できなくなっていることがあります。
うつ病とは
うつ病は、気分の落ち込みや興味・喜びの低下が続き、日常生活に支障が出る病気です。
単に「気分が落ち込む日がある」というだけではなく、憂うつな気分が長く続いたり、今まで楽しめていたことが楽しめなくなったりすることが大きな特徴です。
厚生労働省は、悲しく憂うつな気分が一日中続く、これまで好きだったことに興味がわかない、何をしても楽しくない、眠れない、疲れやすい、自分に価値がないように思える、集中力がなくなる、死にたいと思うなどの症状のうち、一定の症状が2週間以上続く場合は専門家への相談を勧めています。
うつ病の主な症状には、次のようなものがあります。
・気分が落ち込む
・何をしても楽しくない
・やる気が出ない
・好きだったことに興味がなくなる
・疲れやすい
・集中できない
・決断できない
・眠れない、または寝すぎる
・食欲が落ちる、または食べすぎる
・自分を責める
・消えてしまいたいと思う
うつ病は「心の症状」だけではありません。体の症状として、食欲低下、不眠、体のだるさ、頭痛、肩こり、動悸、胃の不快感、便秘や下痢、めまい、口の渇きなどが出ることもあります。
つまり、うつ病でも自律神経失調症のような体の不調が出ることがあります。
自律神経失調症とうつ病の大きな違い
自律神経失調症とうつ病の違いを簡単に言うと、中心になっている症状が違います。
自律神経失調症では、動悸、めまい、息苦しさ、胃腸の不調、冷え、発汗、不眠、だるさなど、体の症状が中心になることが多いです。
一方、うつ病では、気分の落ち込み、興味や喜びの低下、意欲の低下、自責感、集中力の低下、死にたい気持ちなど、心の症状が中心になります。
ただし、ここが難しいところです。
うつ病でも体の症状が強く出ることがあります。特に軽症のうつ病では、めまい、耳鳴り、頭痛、肩こり、手足のしびれなど体の症状が目立ち、心の症状がわかりにくい場合があるとされています。
そのため、「体の不調がメインだから自律神経失調症で、うつ病ではない」とは言い切れません。
比較するとわかりやすい違い
自律神経失調症とうつ病は、次のように整理するとわかりやすくなります。
自律神経失調症は、体の調整機能が乱れている状態として説明されることが多く、症状は動悸、めまい、息苦しさ、胃腸不調、冷え、汗、不眠、疲労感などが中心です。
うつ病は、気分、意欲、興味、思考、睡眠、食欲などに影響し、生活全体が重くなる病気です。気分の落ち込みや興味の低下が続き、「楽しい」「やりたい」という感覚が戻りにくくなります。
自律神経失調症では、体調に波があり、休むと少し楽になる人もいます。
うつ病では、休んでも気分が晴れず、好きなことをしても楽しめない状態が続くことがあります。
自律神経失調症では、「体がしんどい」「動悸が怖い」「めまいが不安」という訴えが多くなります。
うつ病では、「何もしたくない」「自分には価値がない」「消えてしまいたい」という考えが出ることがあります。
ただし、実際には両方が重なっていることもあります。
自律神経失調症からうつ病になることはある?
自律神経失調症のような体の不調が長く続くと、不安や落ち込みが強くなることがあります。
たとえば、毎日めまいがする、動悸が怖い、外出が不安、眠れない、仕事に行けないという状態が続くと、心も疲れていきます。
「また具合が悪くなるかもしれない」
「いつ治るのかわからない」
「周りに理解されない」
「自分はもう普通に生活できないのではないか」
このような不安が積み重なると、気分の落ち込みや意欲低下につながることがあります。
反対に、うつ病の初期症状として、自律神経失調症のような体の不調が先に出ることもあります。
つまり、自律神経失調症とうつ病は、完全に別々のものとして切り離せない場合があります。
うつ病を疑った方がいいサイン
次のような状態が2週間以上続いている場合は、自律神経の乱れだけでなく、うつ病やうつ状態の可能性も考えて、専門家に相談することをおすすめします。
・気分の落ち込みがほぼ毎日続く
・今まで好きだったことが楽しくない
・人に会うのがつらい
・仕事や家事に手がつかない
・朝が特につらい
・何をするにもおっくう
・自分を責めてばかりいる
・集中できない
・決断できない
・眠れない、または寝すぎる
・食欲がない、または食べすぎる
・消えてしまいたいと思う
・生きている意味がないと感じる
特に、「死にたい」「消えたい」「自分はいない方がいい」といった考えが出ている場合は、我慢せず、早めに医療機関や相談窓口につながることが大切です。
自律神経失調症を疑いやすいサイン
一方で、次のような場合は、自律神経の乱れが関係している可能性があります。
・気温差や天気で体調が変わる
・ストレスが強い日に動悸やめまいが出る
・寝不足の翌日に不調が強くなる
・胃腸の調子が乱れやすい
・緊張すると息苦しくなる
・休むと少し楽になる
・症状に波がある
・検査では大きな異常がないと言われた
ただし、これらがあるからといって、うつ病ではないとは言えません。
自律神経の乱れとうつ状態は重なりやすいため、症状が長引く場合は、内科だけでなく、心療内科や精神科で相談することも選択肢になります。
「自律神経失調症」と言われたけれど治らない場合
病院で「自律神経失調症でしょう」と言われたものの、なかなか良くならない人もいます。
その場合は、次の点を見直してみてください。
・睡眠不足が続いていないか
・仕事や家庭で過労が続いていないか
・強いストレスを我慢していないか
・食事が乱れていないか
・カフェインを摂りすぎていないか
・運動不足になっていないか
・気分の落ち込みが続いていないか
・好きなことを楽しめなくなっていないか
・不安や恐怖で行動範囲が狭くなっていないか
体の症状だけに注目していると、心の疲れに気づきにくいことがあります。
「体調が悪いから気分が落ち込んでいる」のか、
「うつ状態があるから体の不調が強く出ている」のか、
自分だけで判断するのは難しいです。
長引く場合は、医師に「気分の落ち込みもあります」「好きだったことが楽しめません」「不安が強いです」と具体的に伝えることが大切です。
受診するなら何科?
まず動悸、めまい、息苦しさ、頭痛、胃腸症状などがある場合は、内科、循環器内科、耳鼻科、消化器内科などで体の病気がないか確認することが大切です。
そのうえで、検査では大きな異常がないのに症状が続く場合や、不安、落ち込み、不眠、意欲低下が強い場合は、心療内科や精神科への相談を考えましょう。
心療内科は、ストレスが体の症状として出ている場合に相談しやすい診療科です。
精神科は、うつ病、不安障害、パニック障害、不眠など、心の症状を専門的に診る診療科です。
どちらに行くべきか迷う場合は、まず通いやすい医療機関に相談して問題ありません。
大切なのは、「自律神経の問題だから我慢する」「うつ病かもしれないけど認めたくない」と一人で抱え込まないことです。
自律神経失調症とうつ病に共通して大切なこと
自律神経失調症とうつ病のどちらにも共通して大切なのは、生活リズムを整えることです。
特に大切なのは、睡眠、休息、食事、ストレスを減らすことです。
・朝起きる時間をなるべく固定する
・夜更かしを減らす
・寝る前のスマホを控える
・カフェインを摂りすぎない
・食事を抜かない
・軽い散歩をする
・予定を詰め込みすぎない
・疲れている日は無理をしない
・不安や落ち込みを一人で抱え込まない
ただし、うつ病が疑われるほどつらい時に、「生活習慣を整えれば治る」と考えすぎるのは危険です。
本当にしんどい時は、生活改善を頑張る気力すら出ないことがあります。その場合は、まず医療機関や信頼できる人に相談することが先です。
まとめ:違いはあるが、自己判断は難しい
自律神経失調症とうつ病には違いがあります。
自律神経失調症は、動悸、めまい、息苦しさ、胃腸不調、冷え、発汗、不眠、疲労感など、体の不調が中心になりやすい状態です。
うつ病は、気分の落ち込み、興味や喜びの低下、意欲低下、自責感、集中力低下、死にたい気持ちなど、心の症状が中心になりやすい病気です。
しかし、実際には症状が重なることが多く、うつ病でも体の不調が前面に出ることがあります。
そのため、「体の症状だから自律神経失調症」「気分が落ち込むからうつ病」と単純に分けることはできません。
目安としては、次のように考えてください。
体の不調が中心で、症状に波があり、休むと少し楽になる場合は、自律神経の乱れが関係している可能性があります。
一方で、気分の落ち込み、楽しめない、やる気が出ない、自分を責める、消えたい気持ちが続く場合は、うつ病やうつ状態の可能性も考える必要があります。
どちらの場合も、無理をして我慢し続ける必要はありません。
不調が長引いている。
生活に支障が出ている。
眠れない日が続いている。
気分の落ち込みが強い。
消えてしまいたい気持ちがある。
このような場合は、早めに医療機関に相談してください。
自律神経失調症とうつ病の違いを知ることは大切ですが、もっと大切なのは、今の自分のつらさを軽く見ないことです。
体と心はつながっています。
体の不調も、心の不調も、どちらもあなたからの大切なサインです。
「まだ大丈夫」と我慢しすぎず、早めに休むこと、相談すること、必要なサポートを受けることが、回復への第一歩になります。

